採用で応募者のSNSを見る前に。企業が決めておきたい確認範囲と情報の扱い
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こんな方へ求人を出す企業、応募者の情報の確認や採用選考を担当する方へ
面接では分からなかった人柄を知りたい。入社後の情報発信で困ることがないか確かめたい。そんな理由で、応募者のSNSが気になる採用担当者もいるかもしれません。ただ、検索して見つかる情報には、仕事の実績だけでなく、私生活や家族、本人の考え方に関するものも混ざっています。
マイナビが2026年7月に発表した調査では、中途採用担当者の41.7%が、勤務先で求職者のSNSチェックを実施していると回答しました。対象は一定の条件に該当する中途採用担当者816人で、調査期間は7月1日~7日です。この数字から、全ての企業が行っている、確認すれば採用の失敗を防げる、とまでは言えません。
この記事では、求人を出す企業に向けて、確認する目的、集める情報の範囲、見つけた情報の受け止め方、社内での扱いを整理します。
この記事のポイント
- 採用で確かめたい仕事上の能力を先に決め、私生活の探索へ広げない。
- 公開情報でも、単なる閲覧と、採用資料として取得・利用する場合の扱いを分けて確認する。
- 投稿の印象だけで人柄を決め付けず、面接などで仕事に関する具体的な行動を確かめる。
この記事の目次
まず、採用で何を確かめたいのかを決める
「何となく気になるから見る」という状態では、担当者の好みや、その日見つかった情報に判断が引っ張られやすくなります。先に、今回の仕事で必要な経験・技能・行動を言葉にしておきましょう。
例えば、制作職で本人から提示された作品を確認するなら、どの部分を担当し、どのように作り、修正にどう対応したかが確認の対象になります。SNSの運用が業務に含まれる職種なら、仕事での運用経験や、公開前に内容を確認する手順などを、本人に説明してもらう方法もあります。
その目的が、応募書類、面接、本人が示す実績資料などで確認できるなら、そこから進めます。「人柄を知りたい」という広い言葉だけで、趣味や交友関係まで調べる必要があるのかは、一度立ち止まって考えたいところです。
仕事に関係しない情報まで集めない
大阪労働局の令和8年度の公正採用選考の資料は、応募者のSNSアカウントを特定して投稿を調べることについて、仕事の適性・能力とは関係のない情報の収集や、就職差別につながるおそれを示しています。自社で調べる場合も含めての注意です。
また、ハローワークの個人情報の取扱いに関する案内では、募集業務に必要な範囲で個人情報を収集・保管・使用することや、思想・信条、労働組合への加入状況など、原則として収集が認められない情報を説明しています。
SNSでは、本人が何を投稿しているかだけでなく、家族のことや、宗教・支持政党などに関する情報に触れる可能性もあります。仕事に必要な能力の確認から離れた情報を、採用担当者の関心で集めたり、選考メモへ残したりしないようにします。
本人への説明や同意の確認とあわせて、調べる内容そのものの必要性も点検しましょう。調査会社に頼む場合も、「何が報告されるのか分からないが、まとめて任せる」という進め方にせず、依頼の目的と範囲を確認します。
公開情報でも、閲覧と取得・利用の扱いを確認する
公開されている情報を画面で見ることと、その内容を採用資料に取り込んで使うことは、同じ扱いとは限りません。
個人情報保護委員会のQ&Aでは、インターネット上の情報を単に閲覧する場合と、転記して検索可能にしたり、ダウンロードしてデータベース化したりする場合について、個人情報の「取得」に当たるかの考え方を分けています。
さらに、個人情報を取得する場合の利用目的の通知・公表などは、個人情報保護委員会のガイドラインで確認する必要があります。本人から直接書面等で受け取る場合には、事前の明示に関するルールもあります。適用される例外を含め、取得方法に応じて確かめましょう。
採用を担当する会社としては、まず、何を何のために受け取り、選考でどう使うかを説明できる状態にします。応募者が示してくれた作品のURLを確認する場合も、そこから無関係な私生活の情報まで広げないよう、担当者間で目的をそろえておきます。
見つけた投稿を、すぐ本人の評価へ結び付けない
同じ名前のアカウントが見つかっても、本人だと決まるわけではありません。本人が書いた投稿でも、時期や前後の文脈が分からなかったり、第三者が切り取って紹介していたりすることがあります。
「投稿が少ないから消極的」「趣味が自社の社員と違うから合わない」といった受け止め方は、今回の仕事で必要な能力の確認から離れていないでしょうか。投稿しないこと、私用のアカウントを公開していないことを、そのまま不利な評価に結び付けない運用も大切です。
次の表は、社内で判断の仕方を見直すための整理例です。
| 気になる場面 | いったん確認したいこと |
|---|---|
| 同じ名前のアカウントが見つかった | 本人と決め付けて評価を進めていないか。そもそも確認する必要がある情報か。 |
| 投稿の一部分だけが目に入った | 時期や前後の説明を欠いた情報から、事実や人柄を決め付けていないか。 |
| 仕事と関係のない私生活が分かった | 採用判断に持ち込まず、不要な記録や社内共有を広げていないか。 |
| 本人から作品や実績を示された | 今回の仕事に関係する担当範囲・過程・成果を、本人へ具体的に確認できるか。 |
仕事上どうしても確認する必要がある点が残った場合も、推測を事実として書かず、担当者だけで採否を決めないようにします。個別の調査方法や選考への利用で迷う場合は、必要性を整理したうえで、管轄の労働局・ハローワークや専門家へ確認しましょう。

記録する内容と、共有する相手を絞る
適切に取得する必要のある情報についても、採用に関係する人なら全員が見られる、という状態にする必要はありません。確認を担当する人、判断を見直す人、資料を保管する場所を決めます。
- 目的と範囲:今回の仕事の何を確認し、どこまでの情報を扱うのか。
- 確認と判断の担当:誰が確認し、判断に迷うとき誰へ相談するのか。
- 記録と共有:残す必要のある内容は何か。誰が見られるようにするのか。
- 保存の見直し:いつ利用の必要性を確認し、不要な資料を整理するのか。
これは運用を考えるための例で、法定の保存期間を一律に示すものではありません。個人情報保護委員会のガイドラインは、個人データの安全管理や、利用する必要がなくなったときの消去に努めることなども定めています。選考が終わった後の取扱いも含めて、自社のルールを確かめます。
私用端末への保存、関係のないグループへの転送、外部サービスへの安易な貼り付けなどによって、必要な範囲を越えて広がらないようにします。投稿を見て抱いた印象と、仕事に関して確認できた事実も、選考の記録の中で混ぜないことが大切です。
人柄への不安は、仕事に関する具体的な質問へ
協力して働けるか、情報を慎重に扱えるかが気になるなら、その仕事で起こる場面に沿って確認する方法を用意しましょう。例えば、次のような質問が考えられます。いずれも本記事のために作成した例です。
複数人で進めた仕事の中で、ご自身が担当したことを教えてください。意見が違ったとき、どのようにすり合わせましたか。
業務の情報を共有するとき、相手や共有する範囲をどのように確認していましたか。前の職場の秘密や、他の方の個人情報を含めずに説明してください。
経験の浅い人には、これから担当する仕事の場面を説明して、どう進めるかを聞く方法もあります。応募者の経験に応じて問い方を調整しつつ、同じ職種では何を評価するかをそろえます。
面接での説明も、そのまま全てを事実として保証するものではありません。それでも、何を聞き、何をもとに評価したのかを記録できれば、担当者の曖昧な印象だけで判断していないかを見直しやすくなります。
次の募集までに、社内で確認したいこと
- 今回の仕事で確認する経験・技能・行動を、採用担当者と現場で共有した。
- 私生活や思想・信条など、確認・収集へ広げない情報の範囲を確かめた。
- 個人情報を受け取る目的と方法について、説明・同意など必要な対応を確認した。
- 出所や本人との関係が不明な情報を、事実として採用判断に使わないようにした。
- 記録の保管場所、閲覧できる人、保存を見直す時期を決めた。
- 人柄や情報の扱いを確かめたい点は、仕事に沿った質問や実績の説明で確認できるようにした。
求人票を作るときも、求める人のイメージだけでなく、実際に任せる仕事と、選考で確かめることを書き出してみましょう。必要な能力を言葉にする作業は、応募条件と面接の内容をそろえることにもつながります。
※資料は2026年10月29日に確認しました。表、運用項目、面接の質問は社内で検討するための編集上の例です。SNSの調査・取得・利用が一律に適法または違法と説明するものではありません。実際の方法や情報の内容に応じ、公的資料と自社の取扱いを確認してください。
出典・確認した公的情報
編集:シャイニー / 制度の確認: