外国人社員と長く働くには。役割・待遇の変化とこれからの備え

テーブルを囲んで仕事について話し合う社員たち

こんな方へ外国人社員の育成・評価や、長期的な働き方を考える企業の方へ

入社した頃は仕事を教わっていた社員が、新人に説明したり、難しい案件を任されたりするようになった。外国人社員と長く働く職場では、採用時の条件を守ることに加え、成長に合わせて役割や待遇を見直す場面が出てきます。

会社が「長くいてほしい」と考えていても、本人が望む仕事や暮らしが入社時と同じとは限りません。この記事では、公表された企業の実例を参考に、経験を重ねた社員との働き方と、在留資格・制度の見通しを整理します。

この記事のポイント

  • 教える仕事や判断する仕事が増えたら、担当範囲・評価・待遇を一緒に見直す。
  • 長期就業の企業例は、調査時点や雇用形態を確かめ、自社の制度と区別して読む。
  • 本人の希望、就労できる業務、在留期間、将来制度を分けて考え、会社だけで進路を決めない。
この記事の目次
  1. 「慣れた人」になった後、何を任せるか
  2. 長く働く中で役割が変わった企業の実例
  3. 仕事が増えたら、評価・給与・登用の道筋も伝える
  4. 本人の「この先」と、会社の期待をすり合わせる
  5. 長期就業は、雇用契約と在留資格を別々に確かめる
  6. 育成就労は、今の社員全員に適用される制度変更ではない
  7. シャイニーの視点
  8. 長く働くための見直しを、次の面談から

「慣れた人」になった後、何を任せるか

日々の業務に慣れたからといって、その先の役割まで自然に決まるわけではありません。後輩を指導する、顧客の要望を整理する、品質を確認する、段取りを改善するなど、経験が生きる仕事を本人と具体化したいところです。

例えば「後輩の面倒を見てほしい」だけでは、どこまで判断してよいのか分かりません。「初週の作業説明を担当する」「困った案件は上司へ引き継ぐ」と範囲を決め、通常業務に加えて必要になる時間も確保します。これは編集部による運用例です。

同じ言語を話せる社員に、通訳や生活相談がいつの間にか集中することにも注意が必要です。本人が希望する役割かを確かめ、業務として頼む範囲と責任、代わりの相談先を整理します。語学の力があることと、無制限に支援を担えることは別です。

長く働く中で役割が変わった企業の実例

JILPTの資料シリーズNo.270は、2022年度に行った受け入れ企業19社への聞き取りをまとめた2023年の資料です。外食業のR社への調査日は2022年9月29日。正社員として3〜4年働く方が、翻訳や採用面接への同席、現場のフォローを担うと報告されています。アルバイトとして10年以上前から働き、在留資格の変更後に正社員になった方の記述もあります。JILPT資料シリーズNo.270・冊子197〜198頁

ここでいう「10年以上」は、正社員になってからの年数ではありません。また、これは当時の企業側の説明であり、現在まで追跡した結果や、全国の外国人社員に共通する傾向を示すものではありません。

自社で考えたいのは、経験や言語の力によって役割が広がった際に、担当者として位置付け直しているかという点です。「頼れるから任せる」で終えず、役割が本人のキャリアや評価につながっているかを確認します。掲載当時の在留資格の説明を、そのまま現在の採用可否の根拠にはしません。

仕事が増えたら、評価・給与・登用の道筋も伝える

厚生労働省が掲載する製造業M社の事例では、月給制や家賃補助の対象を見直し、本人の希望と評価を踏まえた登用・転換の経路を整えています。約2年間で約10人が正社員へ転換したという記載は、日本人と外国人の合計です。掲載文には公表年・調査日の明記が見当たらないため、掲載時点の企業の報告として紹介します。厚生労働省・M社の取組事例

特定技能2号取得後の無期雇用への転換は、同社の運用として説明されたものです。どの会社でも2号になれば自動的に正社員や無期雇用になる、という法律上の仕組みではありません。

評価の面談では、今の仕事に加えて何を担うと評価が変わるのか、昇給や手当をいつ判断するのか、資格取得がどの業務に結び付くのかを具体的に伝えます。試験に合格すれば必ず昇給する制度なのか、昇格選考の条件になるのかも分けて説明しましょう。

外国人雇用管理指針では、能力を発揮しやすい環境の整備や教育訓練などが示されています。国籍を理由に労働条件を差別的に扱うことはできません。社内の評価・育成は、任せる仕事と本人の能力を基に考えます。厚生労働省・外国人雇用管理指針

向かい合って話すスーツ姿の男性2人
今の役割や評価に加え、本人が希望する今後の仕事についても話し合います(イメージ写真)。

本人の「この先」と、会社の期待をすり合わせる

会社が管理職になってほしいと考える一方、本人は専門性を深めたい、今の働き方を続けたい、家族の事情で帰国したいと考えているかもしれません。「日本で長く働くはず」と決めつけず、話せる範囲で希望を聞きます。

面談で確認する項目の例です。法定の面談様式ではなく、仕事上必要な範囲を本人と共有するための整理です。家庭の事情を詳しく聞き出すことを目的にしません。

話し合うこと会社が具体化すること
続けたい仕事・挑戦したい仕事役割の候補、習得する技能、任せる時期
指導や通訳など、増えている仕事担当範囲、業務時間、評価への反映
取得したい資格や学びたいこと研修、受験時期、費用・勤務の扱い
勤務地や勤務時間などの希望制度上選べる働き方と、調整できる条件
在留期間や将来の進路本人の希望、必要な確認先、準備する時期

その場で結論が出ないことは、誰が何を確認し、いつ話し直すかを決めます。帰国や転職の希望も本人の選択として受け止め、定着させるために約束できない待遇や在留の見通しを伝えないようにします。

長期就業は、雇用契約と在留資格を別々に確かめる

期間の定めのない雇用契約でも、在留資格の更新や変更が不要になるわけではありません。昇進や部署異動を考える際は、役職名だけでなく、変更後に実際に行う仕事を確認します。例えば「技術・人文知識・国際業務」は、認められる活動が定められた資格です。会社が必要とする仕事なら何でも任せられるわけではありません。出入国在留管理庁・技術・人文知識・国際業務

特定技能1号は、原則として通算在留期間の上限が5年です。特定技能2号は更新回数の上限がなく、要件を満たせば配偶者・子の帯同も可能ですが、更新の手続きは必要です。すべての分野に2号があるわけではなく、会社の正社員区分とも別の制度です。外務省・特定技能の制度概要

また、1号で一定年数働けば自動的に2号になるものではありません。対象分野、技能水準、試験や実務経験などの要件を、本人の業務と合わせて確認します。入管庁の運用要領でも、自動的な移行ではないことが示されています。特定技能外国人受入れに関する運用要領

本人ごとの在留期限と、制度上の通算期間は分けて管理し、期限直前に初めて将来の相談をしないようにします。通算期間の算入や例外は個別の事情で確認が必要です。正社員としての勤続や特定技能2号の取得が、そのまま永住許可になるわけでもありません。永住は別の申請・審査です。出入国在留管理庁・永住許可の案内

育成就労は、今の社員全員に適用される制度変更ではない

育成就労制度の開始は、2027年4月1日です。この記事の確認時点では、将来の制度として準備を進める段階です。原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成する仕組みで、一定の条件の下で本人の意向による転籍も認められます。出入国在留管理庁・育成就労制度Q&A

技能実習には経過措置があるため、開始日に全員が育成就労へ切り替わるわけではありません。また、技術・人文知識・国際業務や永住者など、別の資格で働く社員まで同じ制度に置き換わるものでもありません。既存社員への対応と、新しく受け入れる場合の準備を分けて考えます。

会社が今から整理したいのは、自社の分野のルール、育成を担当する人、必要な日本語・技能の習得機会、評価や待遇の道筋です。制度が変われば人材が確保できると見込まず、本人が成長を実感できる仕事と説明を用意することが実務上の備えになります。

長く働くための見直しを、次の面談から

  • 今の担当と、見えにくく増えた仕事を書き出す。
  • 本人の希望を聞き、次に任せる役割を具体化する。
  • 評価・給与・手当・学ぶ機会とのつながりを説明する。
  • 業務変更と在留資格の適合、期限と通算期間を確認する。
  • 会社だけで判断できない申請や制度は、確認先と準備時期を決める。

採用前の確認、入社後の受け入れ、長期就業を考える基本の話題はここで一区切りです。「外国人雇用」のカテゴリーでは、今後も必要なテーマを個別に取り上げます。今回の内容を踏まえ、まずは本人と次に話し合うことを一つ決めてみてはいかがでしょうか。

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※資料は2026年10月31日に確認しました。企業例は各資料の掲載・調査時点の報告で、当サイトの取材や長期追跡の結果ではありません。面談や役割分担の例は編集部の提案です。在留資格・申請・制度移行の個別の取扱いは、出入国在留管理庁や分野所管省庁等の最新案内で確認してください。

出典・確認した公的情報

編集:シャイニー / 制度の確認: