内定後、会社は何の書類を渡す?労働条件通知書・雇用契約書の準備と説明

オフィスの机で手に持った書類の内容を確認する女性

こんな方へ内定者へ渡す書類を初めて用意する方、採用と労務を兼ねる企業の担当者へ

転職先から内定が出て、今の会社にこれから退職を伝える。そんな方にとって、給与や仕事内容、勤務地を確認する書類は、これからの生活と退職の判断に関わるものです。条件が曖昧なままでは、安心して次の一歩を決められません。

働く条件を会社から示す書類は、一般に労働条件通知書と呼ばれます。条件を明示する義務自体は以前からありますが、2024年4月と、対象者を限った2026年10月の変更にも注意が必要です。

この記事では、採用を担当する方へ、退職や内定承諾の前に条件を確認したいという申し出への備え、法令上の明示義務、書類に記載する内容を整理します。求められてから慌てないよう、社内で条件を確かめ、説明できる書面を準備しておきましょう。

この記事のポイント

  • 内定者が現職を辞めるか判断できるよう、入社前に条件を確認する機会を用意する
  • 募集時にも契約時にも条件を明示する義務があり、本人に求められた場合だけの対応ではない
  • 契約時に書面等で示す重要事項と、雇用形態に応じた追加事項を確認する
この記事の目次
  1. 1.「今の会社を辞める前に確認したい」という申し出に備える
  2. 2.まず、3つの書類の役割を整理する
  3. 3.求められたら渡す義務はある?募集時と契約時を確認する
  4. 4.労働条件通知書には、何を書かなければならない?
  5. 5.記入する前に、社内で条件をそろえる
  6. 6.古いひな形には、変更点が入っているか確かめる
  7. 7.渡すときは、求人・面接との違いを一緒に確認する
  8. 8.最終版と、渡した記録を残す
  9. シャイニーの視点
  10. 次の募集へ、確認した条件をつなげる

1.「今の会社を辞める前に確認したい」という申し出に備える

転職する方は、内定を受けるかどうかに加え、現職へ退職を伝える時期や、引き継ぎの予定も考えています。入社後の条件を確かめたいという申し出を、その判断に必要な確認として受け止めましょう。

申し出の例:「現在の勤務先へ退職を伝える前に、給与や勤務地などの最終条件を確認したいです。労働条件通知書など、手元に残せる書面でいただけますか。」

企業側は、誰が条件を確定し、いつ説明して、どの方法で渡すのかを決めておきます。「書類は入社してから」と案内する前に、契約を結ぶ時期と、本人の確認が必要な時期を確かめてください。

退職前という日が、一律に法律上の交付期限になるわけではありません。ただ、法令上必要な明示を行うことに加え、転職者が退職を判断できるよう、適用する条件を早めに示すことも採用実務では大切です。

2.まず、3つの書類の役割を整理する

書類の名前をそろえる前に、何を伝え、何を確認するためのものかを分けます。

書類主な役割と確認すること
内定通知書採用の内定を知らせる書類。内定の連絡だけで、必要な労働条件の明示まで済んでいるとは限りません。
労働条件通知書会社が労働条件を示す書類。仕事内容、賃金、労働時間など、法令で必要な事項を記載します。
雇用契約書会社と働く人が合意する契約内容を残す書類。「労働契約書」と呼ばれることもあります。

労働条件通知書と雇用契約書を兼ねた書面にする方法もあります。3種類の書類を必ず別々に作る、という意味ではありません。兼用する場合も、必要な条件が明示され、双方で契約内容を確認できる形かを見直してください。

また、契約書に署名する日だけを、契約が成立する日だと決めつけないことも大切です。労働契約は労使の合意によって成立し、内容はできる限り書面で確認することとされています。労働契約法の第4条・第6条

3.求められたら渡す義務はある?募集時と契約時を確認する

募集・選考の段階にも、条件を明示する義務がある

企業は、労働者を募集するときにも、業務内容や賃金、労働時間などを明示する必要があります。重要事項は求人票や募集要項などの書面で示し、本人が希望する場合は、印刷できる電子メール等の方法も認められています。まだ入社していないことを理由に、必要な条件を示さなくてよいわけではありません。厚生労働省の募集時・採用時の明示の説明

募集時に示した条件と、選考を経て本人へ提示する条件に変更がある場合は、その内容も速やかに明示します。求人の内容を渡すことと、今回採用する本人の条件が何かを確認することの両方が必要です。厚生労働省の求人企業向けリーフレット

契約を結ぶときは、求められなくても重要事項を書面等で示す

労働基準法では、労働契約を結ぶ際に労働条件を明示し、重要事項は書面で交付する義務があります。本人に求められた場合だけ渡すものではありません。内定によって契約が成立する場合は、入社前の内定時に明示が必要です。厚生労働省の採用内定時の案内

そのため、内定を伝える日が決まってから慌てて条件を集めるよりも、採用を進める段階で、作成する人・条件を決める人・本人へ説明する人を決めておくと準備が進めやすくなります。小さな会社で同じ人が兼ねる場合も、どこを確認したかは残しておきましょう。

重要な条件は書面での交付が原則です。本人が希望する場合は、印刷して書面を作成できる電子メール等の方法も使えます。電子で渡すときは、希望の確認に加え、添付ファイルを開けるか、保存・印刷できるかも確かめておきましょう。厚生労働省の労働条件明示に関するQ&A

書類の名前だけで、義務を果たしたかは判断しない

法令上必要なのは、必要な条件を所定の時期と方法で明示することです。求職者が呼んだ名前と会社の書類名が違うときも、給与や仕事内容などを確認できる書面になっているかを確かめましょう。

労働条件通知書と雇用契約書を兼ねる方法もあり、別名の書類を何種類もそろえることが一律の義務ではありません。一方、口頭で説明しただけの場合や、内定の事実しか書いていない場合は、それで法定の書面明示まで済んでいるとはいえません。

4.労働条件通知書には、何を書かなければならない?

原則として書面等で明示する重要事項

一般の労働者を採用するときは、次の事項を確認します。有期契約の項目など、該当する場合に必要となるものもあります。

  • 契約期間:期間の定めの有無。定めがある場合の契約期間
  • 有期契約の更新:更新の有無、更新する場合の判断基準、更新上限の有無と内容
  • 勤務地・仕事内容:雇い入れ直後の就業場所と業務、およびそれぞれの変更の範囲
  • 勤務時間・休み:始業・終業、時間外労働の有無、休憩、休日、休暇、交替制の場合の交替に関する事項
  • 賃金:基本給や手当などの決定・計算・支払方法、締め日、支払時期
  • 退職:退職に関する事項と、解雇の事由

「月給○万円」だけで済ませず、賃金の計算や支払いまで確認できる形にします。固定残業代がある場合は、基本給との区分、対象の時間数や金額、超過分の扱いも、募集時の説明と食い違わないよう確認してください。厚生労働省の必須事項のQ&Aと求人企業向けの記載例が参考になります。

昇給や、会社に定めがある場合の項目も確認する

昇給に関する事項も明示が必要です。ただし、一般の労働者については、上の重要事項と異なり、労働基準法上、書面による明示まで一律に義務付けられているわけではありません。本人が見返せるよう、書類にも記載しておくと確認しやすくなります。

また、会社に定めがある場合は、次の事項も明示の対象です。

  • 退職手当の対象・決定・計算・支払方法や支払時期
  • 賞与・臨時の賃金等や最低賃金額に関する事項
  • 食費・作業用品など、本人に負担させる費用
  • 安全衛生、職業訓練に関する事項
  • 災害補償・業務外の傷病扶助、表彰・制裁、休職に関する事項

これらは、一般の労働者について、すべてが一律に書面交付まで必要な項目というわけではありません。パート・有期雇用の方に必要な追加事項は第6節で確認します。ひな形の記入欄を埋めるだけでなく、適用する制度や就業規則のどこを確認すればよいかも、本人にわかるようにしましょう。必須事項と、定めがある場合の事項の区分

5.記入する前に、社内で条件をそろえる

ひな形の空欄を埋め始める前に、求人で伝えた内容と、今回の人に適用する条件を並べてみてください。次は社内で確認する分担の例です。

  • 採用担当:掲載した求人、面接で伝えた条件、採用する職種、入社予定日をそろえる
  • 現場の責任者:入社直後の仕事と勤務地、将来変更する可能性のある範囲を確認する
  • 給与の担当者:基本給・手当・残業代の扱い、締め日と支払日、試用期間中の条件を確認する
  • 労務の担当者:勤務時間・休日、適用する就業規則、雇用形態に合う様式を確認する

たとえば、採用担当は「転勤はない」と理解していても、現場では別拠点への異動を想定しているかもしれません。本人へ渡す前に食い違いを解消し、実際に説明できる内容へそろえる作業が必要です。

確認が済んでいない条件を、前に採用した人の書類からそのまま写すのは避けましょう。参考にできる部分と、その人のために決め直す部分を分けてください。

6.古いひな形には、変更点が入っているか確かめる

2024年4月:勤務地・業務の「変更の範囲」など

2024年4月から、すべての労働契約の締結時と有期契約の更新時に、就業場所と業務について、雇い入れ直後の内容に加えて「変更の範囲」を明示することになりました。

有期契約では、締結・更新時に更新上限の有無と内容も明示する必要があります。無期転換申込権が発生する契約の更新時には、申込機会と無期転換後の条件の明示も必要です。対象と時期が異なるため、すべてを新入社員へ同じように当てはめないようにします。厚生労働省の2024年変更リーフレット

2026年10月:新たにパート・有期雇用の人を雇い入れる場合

2026年10月1日からは、新たにパートタイム・有期雇用労働者を雇い入れるとき、通常の労働者との待遇の違いの内容・理由等について、本人が会社に説明を求めることができる旨も書面等で明示する必要があります。従来の昇給・賞与・退職手当の有無、相談窓口に加わる項目です。

これは、すべての正社員に一律に加わった項目ではありません。今回採用する人が対象かを確認し、対象者向けの様式と相談窓口を整えましょう。厚生労働省の2026年改正リーフレットと適用時期のQ&Aで確認できます。

様式に迷うときは、厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーから、雇用形態に合うものを選びます。2026年の追加項目に対応したモデル労働条件通知書も公開されています。様式を使う場合も、自社の条件と記載の説明を確認して記入してください。

ノートパソコンの画面を見ながら話し合うスーツ姿の男性2人
書面の内容を確かめ、質問に答えられるように準備しましょう(イメージ写真)。

7.渡すときは、求人・面接との違いを一緒に確認する

書類を送って、署名や返送だけを求める段取りになっていないでしょうか。本人が迷いそうな点を説明できる時間と、質問できる連絡先も用意しましょう。

求人で伝えた条件に変更がある場合は、契約を結ぶ前に、変更内容を応募者へ明示する必要があります。求人票と最終的な書類を並べ、給与の内訳、勤務場所、仕事内容、勤務時間などに違いがないかを確認します。ハローワークの労働条件明示の案内

説明の切り出し方の例:「入社時の勤務地・仕事と、その後に変更する可能性のある範囲は、こちらの欄でご説明します。求人や面接の説明と違って見える点があれば、一緒に確認させてください。」

聞かれたことがその場でわからない場合は、確認する担当者と、回答する時期を伝えます。説明の結果、書類の修正が必要になったときは、口頭のやり取りだけで済ませず、本人が最終版を確認できるようにしましょう。

8.最終版と、渡した記録を残す

社内の実務上の控えとして、誰に、いつ、どの内容を渡したかが追えるようにします。次の項目は、管理方法を決めるための確認例です。

  • 本人へ渡した最終版と、適用する条件の確認資料
  • 交付日と交付方法。電子交付の場合は本人の希望を確認した記録
  • 説明した担当者、質問と回答、書類を修正した場合の経緯
  • 本人が保管できる書面やファイルを渡したことの確認

ファイル名に作成日や版を付けるなど、社内の下書きと交付した最終版を見分けられるようにしておきましょう。保管は会社の文書管理ルールや法令に従って行い、関係のない人が閲覧できる場所へ置かないようにします。

次の募集へ、確認した条件をつなげる

今回の書類づくりで整理した仕事内容や給与、休日は、次に求人を出すときの確認にも使えます。掲載原稿と採用時の説明が食い違わないよう、担当者が見返せる情報をそろえておきましょう。

シャイニーは正社員の求人を掲載できるサイトです。掲載料・成功報酬はなく、会員登録も不要です。掲載できる事業者や求人の条件を確認したうえで、ご活用ください。

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※資料は2026年10月25日に確認しました。社内の分担・管理方法・説明の言葉は実務上の例で、法定様式ではありません。個別の契約や適用が判断しにくい場合は、所管の労働基準監督署や都道府県労働局などへ確認してください。

出典・確認した公的情報

編集:シャイニー / 制度の確認: